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「オルタネート(種)を与えられて、自己を育てる」-オルタネート第一話 感想

加藤シゲアキ 「オルタネート」

 

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加藤さんが小説新潮にて連載を開始されました。改めておめでとうございます。

 

かなりの力作だというお言葉を聞き、ならば私も自分自身読んだ率直な感想を残しておきたいと思い、感想文を書いてみることにしました。

あとは、インプットとアウトプットの練習という意味も込めて、続けられたら…いいな…(基本が三日坊主)

 

 

 

まずは読む前に、小説の概要からイメージした内容。

 

〇3人の高校生が主軸となり、架空のSNSサービス「オルタネート」を題材にした学園もの。青春群像劇。恋愛要素もあり。

 

→高校生という義務教育を終えつつも成人という意味ではまだ子供という、どっちつかずな時期の感情の揺らぎや悩み、葛藤を見れる?

 

→今では身近になったSNSの存在意義について(イメージはTwitter)。いくらでも自分を偽ることができる。本来の自分とは何かを見つけていくのか。

 

→学生のフレッシュで甘酸っぱいような恋愛模様。人間関係が複雑に絡み合うのか。

 

 

 

 

 

以降、読み終えてからの感想。

 

オルタネートの特徴

 

〇高校生限定のSNSアプリ。登録するには学生証の写真認証が必要であったり、それなりに厳重なつくり。

〇高校入学~卒業までの3年間。但し、中退した場合は権利が剥奪される。

〇登録は自由。

〇日記や写真/動画の投稿、高校生同士のマッチングが可能。

 

イメージはmixi(懐かしい)、婚活アプリ、Instagramを混ぜた感じかな。

かなり精密なマッチングというのも、今は検索サイトで自分が閲覧したサイトを元にAIがおすすめのニュースを探してくるようになったし、近い将来あり得そう。

 

オルタネートをきっかけに対話が生まれることもあれば、オルタネートを頼りに対話が減ってしまいそうでもある。

この話の中では登録する人が多数らしいし、登録は強制ではないけれど、する/しないで交友関係に変化はあるんだろうな。

 

 

 

 

 

三人の主人公

 

〇新見蓉(ニイミ イルル)

・高校三年生。調理部部長。実家が和食屋

・オルタネートは登録していない。

 

 

今回一番スポットが当たっていたこともあり、また自分に一番近い考えを持つ彼女の悩みに共感を覚えることが多かった。だからこそ、一番苦しかった。

 

チヂミを作るシーンなんか特に彼女を表しているようで、生地は同じでそこからのアレンジ(個性)は人それぞれ自由なところが良いと分かっていても、結局自分はこうだという理想を押し付けちゃうところは読んでいてしんどくなった。自分を客観視出来るからこそ自己嫌悪してしまう。わかるなあ。

 

この場面で、とうもろこしの種を植えて三つのうち一番いい芽だけ残し、あとは切るというのを思い出した。

蓉ちゃんはそれが冷徹だと感じていたけど、彼女自身が部活内でそういう風になっている気がする。でもワンポーションでは落ちてしまったから、切られた芽側の気持ちもきっと痛いほど分かっているんだと思う。

 

 

またダイキくんの為に振舞ったカルボナーラも、簡単に作るのではなく手間をかけてつくるところが彼女らしく感じた。

手を抜いたりせず、一から丁寧に作る。調理部でも食材から育てて、調理をする。蓉ちゃんは、きっと真面目過ぎるのかもしれない。背中をさすってあげたくなるし、もしかしたら今後、そうしてくれるのがダイキくんなのかも。

 

料理をする描写がリアルで、本当にカルボナーラが食べたくなった。普段から料理をされている加藤さんだからこそ、作る過程が丁寧で想像しやすい。

また、加藤さんの風景や音の描写がとても好きで、やっぱり加藤さんの文から香りや温度を感じられてとても素敵だと改めて思った。

 

 

一番人間臭く、もやもやと悩む蓉ちゃんはこれからどうオルタネートと関わっていくんだろう。ダイキくんとのこれからの関係性も楽しみ。恋をしたことがないという蓉ちゃんは、ダイキくんに対しての感情が変化していくのか。

 

気付けば恋人ではなく、ビジネスパートナーとなっていたランディと別れたダイキくんも切ない。そして手間暇かけて作ったカルボナーラがおいしいというダイキくんはとても優しくて繊細な人なんだと思った。だって目に優しい緑色の髪の毛をしてくるんだもんね。

 

 

 

〇伴凪津(バン ナヅ)

・高校一年生。

・以前よりオルタネートに憧れを抱き、入学してすぐに登録。

 

 

今のところ一番気になっていて、今後どうなるのかわくわくするのが凪津ちゃん。

 

最初は三人の中でも特にオルタネートへ憧れる、今どきの女子高生なのかなと感じた。

 

けど、読み進めているうちに現実主義で(フロウした人は多いけど所謂繋がっただけとか)、想像以上にオルタネートを信仰している。

 

そしてドライに見えて結構ロマンチストなのかもしれない。

精密なAIが導いた相手といつかは出会えるんじゃないかと期待しているところが、危ういけれど可愛くも見えた。第三者目線になると、どうしても個人情報をそこまで伝えて大丈夫なのかと心配してしまうけど。

 

データに裏付けされたもの以外信用しないと言い聞かせ、自分の判断ではなくオルタネートの判断でマッチングしてほしい凪津ちゃん。

過去に自分の判断でミスがあったり、悔やんだことがあったのかな。それか感情のように正確さが曖昧なものに怖がっているのか。「自分だけのオルタネートを育てる」という言葉が印象的だった。

 

 

話が進むにつれて、AIでマッチングした相手も出てくるのかな。いざ対面したとき心が揺れたり、恋に落ちるのか。今のところロボのようにデータしか信じていない彼女が感情任せになるところとか見てみたい。

 

 

凪津ちゃんといえば最初のシーンが印象に残っていて。オルタネートをノートにびっしりと書いて、電子辞書でオルタネートを調べてはその意味を眺める行為に懐かしさを覚えた。

私も初めて知った単語や好きな言葉を調べては眺めて、謎の優越感に浸っていたな。この言葉を私は知っているんだ、という一種の自己満足だったのかもしれない。ゲームの影響で青二才とか(三國無双)、昔見た舞台で伴天連とか(マグダラなマリア)調べてた気がする。

 

 

 

 

 

 

〇楤丘尚志(タラオカ ナオシ)

 

・高校二年生。大阪在住。

・オルタネートに登録していたが、中退したことにより権利が剥奪される。

 

 

三人の中ではまだ謎が多い人物。

大阪から弾丸でやってきて、昔の知人に会うべく学校へ忍び込む。しかも怪しまれないようちゃんと制服と大学生用に私服を揃えて。アクティブだけど用意周到な人だなあ。なんだかここだけ、青春少年漫画のようだった。

 

昔の友人?でもある豊くんとの繋がりは恐らくギターかな。ギターを聴かせてほしいと言っていたし、何らかの事情で豊くんはギターをやめてしまったのか。その事情に尚志くんは関係しているのか。

 

高校を中退した理由や豊くんとの過去はこれから見えてくるだろうけど、豊くんの反応を見ると険悪というほどでもなさそう。

ただ尚志くんの方が弟のオルタネートを借りてまで探し当てて、まだ高校生ながら東京まで会いに行くのだから、相当強い気持ちがあるのかもしれない。そしてそれが中退したことと関係があるのかもしれない。

 

過去への執着なのか、後悔があるのか。今はまだ活発な少年というイメージがあるから、なかなかそう言った負の方向と結びつかないけれども。

 

登場人物はみんな同じ学校なのかと思っていたから、蓉ちゃん、凪津ちゃんときて全く違ったところにもう一人の主人公がいて面白かった。関西弁だし、一人変則的な感じだった。

 

 

 

 

 

 

 

冒頭のF1種がこのお話の行く末と繋がっているように思えた。

 

生産者(世間)が平等に種を与え受粉して(オルタネートを与えて)どのようなF1種(彼女たち)になっていくのか。

与えられた種―オルタネートを通じて、他人との交わりからどういった自己が芽生えるんだろう。

 

今はまだ点と点が薄ーく繋がっている状態だけど、これから色濃くなっていくのかと思うと、とても楽しみです。

三人が今後絡んでいくのかは分からないけど(あえて絡まないままというのもいいなあ)ここ繋がっていたんだ!みたいな伏線回収とか好きなので。

 

 

 

 

こうして月に一度、加藤さんの作品に触れられることがとても嬉しくて、次の回までの間に色々と考えるのも面白くて、改めて連載という有難みを実感しています。

 

加藤さん曰く、既にほとんど書き終えている段階とのことなので、これからどう展開していくのかわくわくしながら読んでいこうと思います。

 

 

 


(感想ってこんな感じでいいもんなのかな)



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